前回の記事では、DXを成功させるためにはツール導入から入るのではなく、業務全体を俯瞰しながらPDCAを回し続けることが重要であること、全体像を把握する1つの方法として「生成AIを活用する」という選択肢に触れました。
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今回の記事では、その部分をもう一歩踏み込み、生成AIのなかでも【ChatGPT】のおすすめ活用方法と、具体的な活用事例をご紹介します。
DXの取り組みをこれまで始めようという時点では、課題や改善方法はほとんど言語化されておらず、「何となくうまく回っていない気がする」「もっといいやり方があるはず」という違和感のみある状態ではないでしょうか。
そんなときにChatGPTを「壁打ち相手」として使い、整理できていない状態からDXの全体像を描いていく方法です。
DXの全体像づくりのつまずきやすいポイント
「全体像を描くといい」と言われても、どう考えていけばいいのか、どこからどこまでが全体像なのかすぐにピンとはこないものです。
その要因の1つは情報が多すぎること。
業務の洗い出し1つにもしても
現場業務、事務作業、管理業務、情報共有、意思決定――
それぞれの業務ごとに、関わる社員ごとに別な視点があります。
便利に使えそうなツールを探しても
・どんなツールをどれくらい導入すればいいのか
・他社はどんなDXを進めているのか
・業界的に遅れていないか
一部分だけを見ても全体の最適解は見えてこず、たくさんの情報を集めるほど、「結局、自社にとって何が正解なのか」が分からなくなってしまいます。
結果として、どこから手をつけるか悩んだまま放置してしまっているというお話を何度もお聞きしました。
だからこそDXの初期段階に必要なのが、考えを整理し、全体を俯瞰するための「壁打ち相手」というわけです。
それでは、ChatGPTをどんなふうに壁打ち相手として活用できるのか、具体的なプロンプト例とともに紹介していきます!
DX構想づくりにChatGPTが向いている理由
生成AIにはさまざまな種類がありますが、全体像づくりの壁打ち相手には、ChatGPTが相性のよいツールです。
その理由のひとつは、ChatGPTは「答えを出す」よりも、考えを整理するプロセスの支援が得意で、考えが整理されていなくても会話を始められる点です。
・業務を分解して整理する
・関係性や流れを構造化する
・抜け漏れや前提を指摘する
といった役割を、人との対話に近い形で担ってくれるため、課題や改善点がはっきり言語化されていない曖昧な状態でも、前提を整理し、問いを投げ返しながら思考を広げてくれます。
もうひとつの特徴は、何度でもやり直せる「仮置き」の思考ができることです。
新しい物事に対しては最初から完璧な計画は立てられないので、仮の整理 → 試行 → 見直し、という流れを繰り返すことが重要です。
「この整理は違うかもしれない」
「別の見方はないか」
といった試行錯誤を、ChatGPTは、気兼ねなく何度でも行える相手でもあります。
「思考の補助輪」として活用できるChatGPTを、どのようなプロンプト(指示文)を出しながら整理していけばいいのか、具体的な例を用いてご紹介します。
実践例|ChatGPTで業務全体を整理してみる
ここからは、実際にChatGPTを使ってDXの全体像づくりを進めていった一例をご紹介します。
今回のケースは、
「DXを進めたい気持ちはあるが、課題や改善点はほとんど言語化できていない」
という、ごく一般的なスタート地点です。
まずは“整理できていない状態”のまま相談する
最初から業務フローや課題をまとめようとする必要はありません。
むしろ、考えがまとまっていない段階だからこそ、そのままの状態でChatGPTに投げることが重要です。
最初に入力したプロンプトは、次のようなものでした。
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従業員10数名ほどの会社を経営しています。
最近、事務作業や管理業務が増えてきて、
社内の業務がうまく回っていない気がしています。
DXを考えたいのですが、
何が課題なのか、どこから手をつけるべきか分かりません。
考えを整理するのを手伝ってください。
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ここでは、業種や細かい状況説明、専門用語などは一切入れず、「うまく回っていない気がする」という感覚を、そのまま言葉にしています。
一例ですが、上のプロンプトに対するChatGPTの応答が下図です。
STEP1からSTEP4まで、かなりのボリュームで「考えるべき観点」が出力されました。

ステップの順番で一つひとつ考えていけばいいわけですが、これを自分1人でやるのはとても大変です。
ここから1つずつ整理していく過程にも全てAIを活用していきます。
検討範囲を小分けにして整理を手伝ってもらう
ChatGPTは一度に広範囲のアウトプットをしようとすると、文脈理解の不足から内容が粗くなってしまうため、ステップの全体を把握したあとは思考整理を進めたいことを細かく絞ってプロンプトを投げていきます。
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うちのような規模の会社では、一般的にどのような業務があるのか、時系列で整理してください。
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今リストアップした業務において、課題になりやすいことや、ミスにつながりやすいことを整理してください。
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今リストアップした業務において、人手が足りなくなりやすい部分や、属人化しやすいポイントを教えてください。
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ステップ1として挙げられた「今起きている違和感を言語化する」の整理に、上記の3点くらいのプロンプトを投げ、出力された回答から自社の状況や頭にある漠然としたモヤモヤと重なっていることをピックアップしていきます。
DXで目指す状態を“仮置き”する
・DX化の対象としてどんな業務があるのか
・どこに問題があるのか(どんな問題か)
・何を優先的に解決したいのか
などがある程度整理できたら、最後に現時点での「仮のゴール」を置いてみます。
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これまでの整理を踏まえて、
DXによって目指す状態を
完璧でなくていいので整理してください。
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一例ですが、上のプロンプトに対するChatGPTの応答が下図です。

ここでは、「〇〇な状態」といった、方向性レベルの整理が出力されました。
この時点では、どのツールを使うか、具体的な施策を決める必要はありません。
「DXの全体像」を描くための、仮の地図ができた状態です。
DX構想づくりの初期段階では、これだけでも十分に大きな前進と言えます。
この整理をどう次につなげるか。GPTだけで完結しない理由
ここまでのChatGPTの活用で、業務全体の俯瞰、課題の言語化、DXで目指す方向性の整理ができました。
一方で、ChatGPTはあくまで思考を整理するためのツールです。
実際の業務データや日々のオペレーションと自動で連携したり、社内で共有・運用していく仕組みそのものになるわけではありません。
ChatGPTは「考えるフェーズ」「全体像を描くフェーズ」では非常に強力ですが、それだけでDXが完結するわけではありません。
重要なのは、この整理を“行動につながる形”に変換すること。
整理した全体像を
・より具体的な計画に落とし込む
・社内で共有できる形にする
・日常業務の中で実行に移していく
この先のステップでは、別の生成AIや業務ツールとの役割分担が重要になってきます。
次回の記事では、
ChatGPTで整理したDXの全体像をどう具体化していくか、
GeminiやMicrosoft Copilotを使った活用例をご紹介します!
業務整理や仕組みづくりをどう考えていくかお気軽にご相談ください!
